よみつがれる絵本

親から子へよみつがれる絵本  Part4   (2017.3.31発行)

紹介している絵本のリストは一概に何才向きということはありませんが読んでもらうなら3~4才、自分で読むなら小学校低学年が目安です。
さよなら さんかく 全国各地で昔から親しまれてきた「さよならさんかく」をもとに、テンポのよいことば遊びが繰り広げられます。最後のページまで読んで、絵本をひっくり返すと、あら不思議。ユニークなしかけになっています。

わらべうたが持つことばの力強さと、優しいタッチで描かれた昭和初期の子どもの生活や遊びが、うまく溶け合った味わい深い絵本です。
さよなら さんかく
安野 光雅(あんの みつまさ)/著
出版者:講談社
発行年:1981年
みんな うんち 人をはじめ、いきものは、食べると必ずうんちをします。その形や大きさはいきものによってさまざま。後始末の仕方もさまざまです。いきものがうんちをする様子が愛嬌たっぷりに表現されています。

独特のアングル、色のコントラスト、文字の配置は、図鑑とは違う絵本ならではの魅力があります。
みんな うんち
五味 太郎(ごみ たろう)/さく
出版者:福音館書店
発行年:1981年
あな 何もすることがなかったひろしは、あなを掘り始めます。家族や友達がやってきて、いろいろ尋ねますが、ただ深くあなを掘り続けるだけ。あなの底に座ると土のいいにおいがします。ひろしは思います「これはぼくのあなだ」、そして、あなを埋め始めます。

言葉も絵も素っ気無いほどシンプル。全ページ縦開きの構図が、見るものを自然とあなに集中させます。
あな
谷川 俊太郎(たにかわ しゅんたろう)/作
和田 誠(わだ まこと)/画
出版者:福音館書店
発行年:1983年
やこうれっしゃ かつて、ブルートレインの愛称で親しまれた夜行列車が舞台。4人家族が、東京から金沢行きの夜行列車に乗る場面から、到着までの車内外の様子が細かく描かれています。

文字は一切ありませんが、ページをめくるごとに進む乗客たちの旅の様子に、自分も一緒に旅をしているような気持ちになります。
やこうれっしゃ
西村 繁男(にしむら しげお)/さく
出版者:福音館書店
発行年:1983年
かあさんのいす わたしは、かあさん、おばあちゃんと暮らしています。火事で何もかも失いましたが、かあさんがもらってきた大きなビンに、家族で少しずつお金を貯めています。ビンがいっぱいになったらそのお金で椅子を買いにいくのです。世界中でいちばんすてきな椅子を買うのです。

明るい色使いは各ページの縁取り模様にまで存分に詰まっており、あふれるような力強さを感じます。
かあさんのいす
ベラ B.ウィリアムズ/作・絵
佐野 洋子(さの ようこ)/訳
出版者:あかね書房
発行年:1984年
ジュマンジ 留守番のジュディとピーターは、公園で拾った「ジュマンジ-ジャングル探検ゲーム-」を始めます。すると指示書き通り、目の前にライオンが現れ、台所ではさるが食べ物を食いちらかしているのです。

技巧を駆使したモノクロ画が、奇妙なのにリアルな世界へと、読者をぐいぐいと誘います。
ジュマンジ
クリス・バン・オールスバーグ/作
辺見 まさなお(へんみ まさなお)/訳
出版者:ほるぷ出版
発行年:1984年
画像なし たんぽぽの花が咲いて、綿毛の種ができ、一斉に風で飛んでいく様子を見たことがありますか。身近なたんぽぽが、四季の中で逞しく生きる姿は魅力に溢れています。

よく観察された描写と色使いは、子どもたちの好奇心をかきたて、自然にふれさせる力を持った科学絵本です。
たんぽぽ
甲斐 信枝(かい のぶえ)/作・絵
出版者:金の星社
発行年:1984年
ぶたぶたくんのおかいもの 初めてのおつかいに出かけたぶたぶたくん。ちょっぴり不安だったけど、途中で一緒になった友達と、楽しくお買い物ができました。帰ろうとした時、友達が近道を教えてくれました。でも、その道は途中から1人で帰る道だったのです。

不安を乗り越え、初めてのおつかいをやり遂げた、子どもの喜びと成長が、素朴かつおおらかな絵で描かれています。
ぶたぶたくんのおかいもの
土方 久功(ひじかた ひさかつ)/さく・え
出版者:福音館書店
発行年:1985年
かさどろぼう 生まれて初めて町で傘を見たおじさんは「なんてきれいで便利なのだろう」と喜んで買って帰ります。ところが寄り道している間に傘は誰かにぬすまれ、何度買って帰ってもやっぱりぬすまれてしまうのです。いったい傘をぬすんだ泥棒は誰なのでしょうか。

スリランカの小さな村での実話をもとに、自然と人間の共存が、色鮮やかな絵で描かれています。
かさどろぼう
シビル・ウェタシンヘ/作
猪熊 葉子(いのくま ようこ)/訳
出版者:福武書店
発行年:1986年
サリーのこけももつみ お母さんと一緒にこけもも摘みにやって来たサリー。山の向こう側でこけもも摘みに来ていたくまの親子。サリーとこぐまは、それぞれお母さんとはぐれてしまい、やっと見つけたと思ったら、お互いのお母さんと取り違えてしまいます。

モノクロ画と繰り返される言葉がリズムをうみ、日常よく見られる幼い子どもの様子がいきいきと描かれています。
サリーのこけももつみ
ロバート・マックロスキー/文・絵
石井 桃子(いしい ももこ)/訳
出版者:岩波書店
発行年:1986年
こねこのぴっち りぜっとおばあさんの家に住んでいるたくさんの動物たち。その中でも好奇心いっぱいなこねこのぴっちは、他の動物たちの真似をしてばかり。ところがそのせいでとても怖い思いをしたあげく、重い病気になります。まわりの仲間の温かさや優しさに触れた時、ぴっちは本当に大事なことに気がつくのでした。

自由で軽やかな線描きの動物たちは、躍動感があり、生命力を感じさせます。
こねこのぴっち
ハンス・フィッシャー/文・絵
石井 桃子(いしい ももこ)/訳
出版者:岩波書店
発行年:1987年
ルピナスさん アリスは、幼い頃に祖父と交わした約束どおり、世界中を旅した後、海辺に住みます。そこで3つめの約束「世の中を美しくする」ために、ルピナスの種を村じゅうにまきました。

実話から着想を得て、一人の女性の前向きな生き方と世代間の美の継承を、作者自身を重ねて描き上げています。
ルピナスさん
-小さなおばあさんのお話-
バーバラ・クーニー/作
掛川 恭子(かけがわ やすこ)/訳
出版者:ほるぷ出版
発行年:1987年
おやすみなさいコッコさん 夜です。まだ寝ていないコッコさんに、お月さまがやさしく語りかけます。「でもコッコはねむらないもん。」とがんばるコッコさんも、やがて安らかな眠りについていきます。

ゆったりしたことばのくり返しと、しっとりした水彩画に、いつのまにか眠りの世界へと誘われます。
おやすみなさいコッコさん
片山 健(かたやま けん)/さく・え
出版者:福音館書店
発行年:1988年
ぼくは おこった テレビの西部劇に夢中のアーサーに向かって、母親が「もうおそいからねなさい」と言います。その言葉にアーサーは怒り、その怒りは雷を鳴らし、嵐がふきあれ、街は水没し、地球を破壊してしまいます。

怒りという抽象的な観念を、簡潔な文とスケールの大きい絵でユーモラスに描いています。
ぼくは おこった
ハーウィン・オラム/文
きたむら さとし/絵・訳
出版者:佑学社
発行年:1988年
くろねこかあさん くろねこかあさんが6匹のこねこをうみました。3匹は白、3匹は黒。かあさんねこに見守られてすくすく育つこねこの姿が、白ねこと黒ねこの行動を対比させながら描かれています。

黒い紙をくり抜き、白い台紙に貼りつけた切り絵の世界と簡略な言葉の中に、かあさんねこのあたたかさが感じられます。
くろねこかあさん
東 君平(ひがし くんぺい)/作
出版者:福音館書店
発行年:1990年
めっきらもっきら どおんどん 遊ぶ友達をさがしてお宮までやってきたかんた。誰もいなくて癪だから、めちゃくちゃのうたを歌ってみたら、木の穴の中から声がします。のぞきこむとかんたは穴にすいこまれ、着いた先は夜の山。かんたと遊びたくてたまらないへんてこりんな3人組が待っていました。

唱え言葉のおもしろさや個性あふれる登場人物が描かれ、不思議な世界の冒険をたっぷりと楽しめます。
めっきらもっきら どおんどん
長谷川 摂子(はせがわ せつこ)/作
ふりや なな/画
出版者:福音館書店
発行年:1990年

※このブックリストは、各絵本ごとに「えほんの勉強会」メンバーが執筆を担当し、高槻市立中央図書館で編集しています。